2013年12月22日日曜日

きれいな男9話あらすじ&日本語訳vol.2

綺麗な男9話、後半です。




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洗面室に入ったダビデは誰もいないのを確かめて電話を取った。

ダビデ(電話)「もしもし」
声(電話)「MGホームショッピングをお辞めになったと聞いて、随分心配なさっています」
ダビデ「言われるまま勉強もしたし、MGホームショッピングにも入社しました。これくらいすれば孝行できたと思いますが」
声「ひとつお訊きしたいことがあります」
ダビデ「(イライラ)何です?」
声「なぜボトン会社に?ひょっとしてトッコ・マテ社長に情が…」
ダビデ「そんなものはありません。会社のビジョンが気に入っただけです。もう切りますので」

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「え?」

ユラのカフェでマテが驚いた声を上げた。

マテ「ナ・ホンラン副社長に隠し子がいるって?」
ユラ「絶対先に見つけなければ。誰にも知られずに隠して育ててるはずよ」
マテ「…。」
ユラ「その息子こそMGの嫡子、ナ副社長の好みにピッタリの後継者だから」
マテ「それなら…」
ユラ「のんびりしていたら、何もできずにアウトになるかもしれないわ。だから、私たちが先に見つけるの」

マテは降って湧いたような話に途方に暮れた。

マテ「見つけたら?」
ユラ「武器を奪うなり、心を奪うなり。いい方法がなければ…葬るなり」
マテ「!」



ユラ「明日にでも現れたらその場で終わりよ。私たち、それを肝に銘じましょう」
マテ「…。」

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THIS WEEK誌では、ナ・ホンランとその後ろに立つパク・キソクの姿が表紙を飾っていた。
その下には、息子であるパク・ムンス理事の写真が掲載されている。
マテは写真を見つめた。



息子がいると…。息子…。

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「社長~♪」ボトンが社長室へ入ってきた。

ボトン「日本のテレビ通販への提案書を作りました」

資料を差し出すと、ボトンが「あれ?」と声を上げた。

ボトン「このおじさんだ」

ボトンはマテの前に置いてあった雑誌を手に取る。

マテ「誰?その人か?」

ボトンは表紙の写真に見入った。

ボトン「やっぱりあのときのおじさんだ」
マテ「何でこの人のこと知ってんだ」
ボトン「前におばさんの付き添いでソウルに来た時に見たんです。おばさんと二人で延々話してたけど、有名な人なんですか?」
マテ「!」
ボトン「雑誌に出るなんてね」
マテ「母さんと?いつだ?」
ボトン「えーっと。おばさんが亡くなる直前でしたよ、多分」
マテ「…。母さんがこの人と会ってたのか?」
ボトン「(頷く)うん」
マテ「ひょっとして、母さんが…」
ボトン「?」
マテ「お前に何か暗号みたいなもの、話したことないか?」
ボトン「暗号?何の暗号?」
マテ「…。」

ボトンはもう一度雑誌に目を落とし、「うわっ」と叫び声を上げた。

ボトン「このおじさん、MGグループの会長なんですか?!凄い!おばさんとすごく仲良さそうだったけど」
マテ「!」

素早く考えを巡らせるマテ。

マテ「そのとき、母さんがそのおじさんにどんなこと話したか分かるか?」
ボトン「うーん。そこまではよく分かりません。私、ちょっと離れて待ってたから」
マテ「あぁ…。分かった。下がっていいぞ」

ボトンが出て行くと、マテはずっと持ち歩いていた写真を取り出した。
若いころの母がパク・キソク氏と写っている写真だ。

マテ(心の声)「母さん。会長に会うなら、なぜボトンじゃなくて俺を連れて行かなかったんだ?暗号はホン・ユラが持っているし、会長はボトンと会った…。二つのうちどちらかでも俺にくれていれば、こんな回り道はしないのに」


#やっと気がついたけど、ボトン手作りのネームプレート、ユラから貰ったものの隣にちゃんと並べて使ってあげてますね、マテは^^


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イタリアのアウトドアブランド、FERRINOの韓国支社設立の記念式典が行われていた。
FERRINO側代表者の隣に控えたマテが、契約書に署名をする。
二人は立ち上がると、ニコヤカに握手を交わした。

その様子は新聞でも大きく報じられる。

『イタリアアウトドアFERRINOの新しい顔 トッコ・マテ支社長
FERRINO韓国支社長として、ミョミの恋人トッコ・マテが合流』

さっそくFERRINOは韓国でのモデルにミョミを迎え、撮影を開始する。
マテも積極的に前に出て活動した。

店舗を一緒に回るボトンがリストを見ながら尋ねた。

ボトン「ソウルの店舗は今日全部回りましたし、地方店にはいつ行かれます?」
マテ「…。」
ボトン「支社長がミョミの彼氏だって皆めーっちゃくちゃ待ってるだろうなぁ」

ボトンはそう言いながら面白くなさそうにそっぽを向いた。

「お前、しっかりしろよな」マテが呆れて立ち止まると、振り返ったボトンがうっとりと見入った。

ボトン「綺麗~」
マテ「まぁな」
ボトン「雪の妖精って感じ」
マテ「?」

ボトンの視線の先はマテではなく、その先のブティックのウィンドウだ。
そこには真っ白なマントコートをまとった服が展示されていた。

ボトン「オッパ、あれ一回だけ試着して行っちゃダメですか?着るだけならタダでしょう?」
マテ「おい、着たからって誰にでも似合うと思うか?デザイナーの立場も考えろ」
ボトン「そうかな…」

マテが先に歩き出すと、ボトンは名残惜しそうにその服を見つめた。

ボトン「待ってくださいよ~」

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「寝なきゃ」ボトンはいちいち呟きながら部屋のベッドに入る。
横になるなりハッとして起き上がった。

ボトン「今日すごく冷えるのに。チーム長、大丈夫かな?」

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「あぅー」

テントの中で寝袋に潜り込んだダビデの息が白くなる。

ダビデ「カイロも切らしてるし、今日は死ぬほど寒いな」

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ボトンは携帯でメッセージを打ち始めた。

ボトン(メッセ)「チーム長、寝ましたか?」

着信音が鳴り、ダビデは寝袋の中から携帯を取り出す。
画面を開くと、「あっ♪」と顔を輝かせ、起き上がった。

ダビデ(メッセ)「いいえ、まだ…」
ボトン(メッセ)「今日すごく寒いでしょ?TT」
ダビデ(メッセ)「いいえ、ちっとも…」

そう打ちながらダビデは寒さでぶるんと震えた。

ダビデ(メッセ)「…寒いです」

送信してニコニコすると、ダビデはメッセージを送り間違えたことに気づく。

「ちっとも寒いです^^」不思議な文章をボトンは「ん?」と見つめると、楽しそうに笑った。

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「どうぞ」

ボトンが枕代わりのクッションをソファーに置くと、ダビデは寝袋にくるまったまま横たわり、安堵の声を上げた。

ボトン「私がソファで寝るのに。寝心地悪いでしょう?」
ダビデ「いえいえ、超快適ですよ。あぁー暖かい」

「足が…」丈の足りない寝袋の中で縮こまっているダビデの足元をボトンが指差す。

ダビデ「ドア開けて寝るんですよ、いいですね?」
ボトン「あはは♪」

ボトンもすぐそばにある自分のベッドに向かった。

ボトン「トクセンオッパはまたクラブかな~。それにしても何で鍵閉めて出掛けるんでしょうね。何気に気分悪いな。私たちが何か盗っていくとでも思ってんのかしら」

ボトンはベッドに入り、ふと思いついたように声を掛ける。

ボトン「あの、チーム長」
ダビデ「はい?」
ボトン「私、お母さんのお店に移るかも」
ダビデ「(起き上がる)どうして?お店は部屋だって少ないのに…ここは居心地悪いですか?」
ボトン「いえ、私は楽だけど、チーム長が不便でしょう?」
ダビデ「…。」
ボトン「寒いのに苦労してテントで暮らすなんて」
ダビデ「ここはどうせ空き部屋になるけど」
ボトン「いくらキャンプが好きでも、冬は部屋で寝なきゃ」

ダビデは数秒沈黙すると微笑んだ。

ダビデ「5年ぶりですよ、この部屋で寝るのは」
ボトン「えっ?!ここ、チーム長の部屋じゃないんですか?」
ダビデ「僕の部屋ですよ^^;」
ボトン「それなのにどうして5年も?」

ダビデは少し困ったように俯く。

ボトン「訊いてもいいですか?何か事情があるんでしょう?」
ダビデ「…。」
ボトン「…。」

「実は…」ダビデは少し低い声で話し始めると、ボトンの緊張が高まった。

ダビデ「この部屋に幽霊がいるんですよ」
ボトン「…。もぉお~~~!^^;;;;;」

笑いながらボトンは怯えたように耳をふさぐ。

ボトン「やめて、私オバケの話は大嫌いっ!」
ダビデ「その幽霊、超イケメンなんだけど…」
ボトン「あ゛ー!やめてぇー!」
ダビデ「枕の下から出てきてね、めちゃくちゃイケメンなんですってば!」
ボトン「あぁあ゛ーーーっ!」

ボトンが布団に潜り込むと、ダビデは笑った。

ダビデ「おやすみ^^」

もう一度ソファに身を沈めると、真顔に戻る。

ダビデ「…。」

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ダビデが仲間たちと組んでいるバンドの練習が始まっていた。
演奏しながら楽譜を見ていたギター奏者が「ちょっと」と演奏を止める。

ギター奏者「歌詞、ホントにお前が書いたのか?」
ダビデ「あぁ。変かな?」
ギター奏者「何でこんなに切々としてんだ?恋愛してんのか、お前?」
ダビデ「あははっ」

女性のキーボード奏者が口を開く。

キーボード奏者「恋愛したい相手が出来たのかな?」
ダビデ「…。」
キーボード「今度の公演に連れてくるの?」
ダビ「(ニヤニヤ)」
ギター「恋愛に無縁のチェ・ダビデを刺激した女は誰なんだ?美人か?」

「あははははっ!」笑ううちにダビデは咳き込む。

ギター「どうした?喉が痛いのか?」
ダビデ「風邪かな?ちょっとゾクゾクするな」
キーボード「コンディション管理ちゃんとしてくださいよ。ボーカルが風邪ひいちゃオシマイでしょ」
ダビデ「えぇ」

「さぁ、やろう」再び練習が始まった。

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マテはボトンが見惚れた『雪の妖精』ドレスの前に立っていた。
しばらく外からガラス越しに眺めると、店の中に入る。

マテ「あのマネキンが来ている服、全部ください」
店員「サイズは?」
マテ「うーん。Sサイズで」
店員「少々お待ちくださいませ」

店員が下がると、マテは満足気にマネキンを振り返った。

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ギターを猛練習したボトンの指先は傷だらけだ。
ダビデは手当をしてやりながら溜息をついた。

ダビデ「ギターなんか教えて、悪いことしちゃったな」
ボトン「?」
ダビデ「痛いでしょ」
ボトン「早く”ギターだこ”が出来たらいいのにな」
ダビデ「どうして?」
ボトン「上手そうに見えるでしょ♪」

二人は笑った。

ボトン「あ!あのとき作ってた曲、出来上がったんですか?」
ダビデ「もちろんですよ、完成です。公演のとき発表しますから」」
ボトン「^^」
ダビデ「僕、実は公演に誰かを招待するのは初めてで…ボトンさん、絶対来ますよね?」
ボトン「もちろん♪その日は音楽鑑賞して、チーム長がどうして私のことで困ってたのか理由も聞いて」
ダビデ「…。」
ボトン「ちょっと怖いな^^;」
ダビデ「暖かい格好で来てください。野外公園だからすごく寒いですよ」
ボトン「えぇ!あー、今度のクリスマスはチーム長のお陰で超楽しそう♪」
ダビデ「^^」

ダビデが喜んだ途端、ボトンの電話が鳴る。
ボトンが「はい、オッパ」と電話を受けると、その瞬間ダビデの顔が曇った。

ボトン(電話)「家ですけど?え?家の前って?」

ボトンは切れた電話をキョトンして見つめた。

ボトン(電話)「家の前にちょっと出て来いって。私、何かやらかしちゃったかな?」
ダビデ「そんなこと言いにここまで?」
ボトン「えぇ」

「お疲れ様です」と声を掛け、ボトンは立ち上がった。

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ボトンが門の外へ出ると、マテは車の運転席で彼女を待っていた。

ボトン「オッパ、こんな時間にどうして?」
マテ「(淡々)何してた?」
ボトン「ギターの練習してました。最近チェチーム長に習ってるんです」
マテ「(淡々)どこで?」
ボトン「私の部屋で」
マテ「(淡々)何でだ。寒いからか?」
ボトン「えぇ。指がかじかむから」
マテ「(イライラ)お前な、寒さを口実にチェチーム長を部屋に入れてんのかよ!」
ボトン「?」

気を取り直し、マテは助手席に乗せてあった紙袋を窓から差し出した。

マテ「受け取れ」
ボトン「何ですか?」

マテはボトンと目を合わせず、頑なに前を見ている。
ボトンは不思議に思いながら中身を取り出した。

ボトン「はっ!これ!!!」

マテはチラリと彼女を見ると、また前に向き直った。

マテ「(淡々)恵まれない人への寄付だ」
ボトン「(ポカーン)」
マテ「(淡々)帰るぞ」

マテはシートベルトを締めた。



ボトン「(ポカーン)」
マテ「(淡々)寒いだろ。風邪引くぞ。入れよ」

まだ硬直しているボトンの前を車が走りだす。

ボトン「キャーッ!!!やった!!!」

バックミラーの中で、ボトンが躍り上がっているのが見えた。

ボトン「オッパ、ありがとうーーー!!!」

嬉しそうな彼女の笑顔を見ながら、マテは小さく呟く。

マテ「さっさと戻れ、キム・ボトン。近隣の地価が落ちる」



ニヤリと微笑むと、マテはアクセルを踏み込んだ。

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会社のデスクで事務作業をしていると、ボトンの携帯にメールが入った。

差出人は『マテオッパ』

本文には『トッコ・マテさん 25日午後7時スペシャルディナーを予約を承りました』

ボトン「何だろ?」

ボトンは社長室のマテを見た。
彼もデスクでPCを見つめている。

ボトン「オッパ、夕食の予約しました?メールが間違って届いたみたいなんだけど」
マテ「…。」
ボトン「どうして私に来たんだろ?」
マテ「……。」
ボトン「これ、発信者もオッパだし…。もしかしてフィッシング詐欺?!」

マテは目を閉じると、静かに開く。



マテ「”オッパ、私をディナーに誘ってくれるんですか?美しきクリスマスの夜に?” そういう質問は思いつかないのか?」
ボトン「…。(悲しげ)オッパ、また結婚するんですか?」
マテ「何だって?」
ボトン「服買ってくれた時から気づいてたんだから!」
マテ「!」
ボトン「優しくして美味しいもの食べさせて、”俺、結婚するから”そういうつもりでしょ。食べないからーーー!!!」
マテ「…。」
ボトン「ビルディング社長さんと結婚するときもそうだったもん」
マテ「おい、人は前を向いて生きるべきだろ。過ぎたこと無闇に話してどーすんだよ!」
ボトン「!」
マテ「あぁ、来んな!(ぶつぶつ)家で一人でラーメン食ってんじゃないかって気を遣ったのに」
ボトン「?!…ホントに私と食べるつもりで予約したんですか?」
マテ「…。(ボソッ)あの服着て来いよ」
ボトン「恵まれない人への寄付!」
マテ「…。」

ボトンの顔がパッと輝いた。

ボトン「25日!クリスマスの日の晩、7…!」

「あっ」とボトンが何かに気づいた。

ボトン「晩?」
マテ「(じーっ)」
ボトン「オッパ、ランチじゃダメですか?晩は約束があるんだけど」
マテ「約束?何の約束だ?」
ボトン「あっ!オッパも一緒に行きますか?その日、チェチーム長が公演なんですって」
マテ「…。」

マテは向こうで仕事中のダビデを仕切り越しに見た。
電話で話しているダビデが視線に気づき、二人の目が合う。
マテは視線を冷ややかにボトンへと戻した。

マテ「まっすぐレストランへ来い。遅れるなよ」
ボトン「…。」
マテ「クリスマスを一緒に過ごしてやるって言ってるんだ。キム・ボトンの人生で滅多に出会えない、このトッコ・マテの気持ちだぞ」

どこまでも淡々と静かなマテの言葉が、ボトンの心に突き刺さった。
後ろで何も知らずに仕事をしているダビデを振り返り、彼女は唇を噛んだ。

#イェップンオッパはナップンオッパ。このシーンあまりに綺麗すぎて怖い

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ダビデは庭のテーブルでじっとマグカップを抱えていた。
落ち着かない表情だ。

昼間、社長室でマテに言われたことが思い出される。

~~その日。社長室のにて

マテ「明日公演があるんですって?練習も必要でしょうし、早くあがってください」

サインを済ませた決済書類を差し出し、マテはダビデを鋭い目で見上げた。

ダビデ「いいえ、大丈夫です」
マテ「僕も行きたいところなんですが、ボトンと夕食の約束がありましてね」
ダビデ「!」
マテ「やっとおさえたレストランだからキャンセルするのも何だし」

ダビデは頷くのがやっとだ。

ダビデ「…えぇ」

~~

+-+-+-+

ボトンはマテからもらった妖精服片手に部屋を歩き回っていた。

ボトン「あ゛ー」

手に持った服と床に置いたギター。彼女は素早く見比べた。

ボトン「生まれてこの方、な~~~んにもなかったクリスマスに…何で二者択一なのよぉ?」

「知らなーい!」困り果てた彼女はベッドに倒れこむ。

そこへ「ボトンさん!」と呼ぶダビデの声が聞こえ、彼女は飛び起きた。
階段を上がってきたダビデは食事を乗せたトレーをちょっと持ち上げて見せる。

ダビデ「軽く食べましょうよ」

コーヒーテーブルに食事を置くと、二人はソファに並んで座り、一緒につまむ。
一口食べると、ダビデはベッドを振り返った。
真っ白な服が置いてあるのが見える。

ダビデ「あれすごく綺麗だな」
ボトン「あぁ…。プレゼントしてもらったんです」
ダビデ「…。」

ダビデは明るく口を開く。

ダビデ「トッコ社長がくれたんだな^^」

ボトンは気まずそうに微笑んだ。

ボトン「恵まれない人への寄付だとか言って。照れくさいんでしょうね。私に優しくするの初めてだから、きまり悪かったみたい」

ボトンの横顔をしばらく見つめると、ダビデはさりげなく切り出した。

ダビデ「オッパを夕食に誘ってみるといいですよ。クリスマスの夜。いいじゃないですか」
ボトン「え?その日は…」
ダビデ「オッパに”いい服を来ても行く所がない”って言ってみるんです。いい口実だし、クリスマスだし、ちょうどいいでしょ?」
ボトン「そんな…。その日はチーム長の公演だってあるんだし」
ダビデ「いえ、大した公演じゃないんですよ。後輩が動画を撮ってくれるって言ってたから、後で観ましょう」
ボトン「だけど…」
ダビデ「ボトンさんが来るっていうからプレッシャーになったみたいだ。コードも押さえられないし、大変だよ、ホント^^;」
ボトン「…それじゃ、後で動画見せてくださいね。(声を潜め)実はその日、オッパが会おうって…」
ダビデ「あぁ~そうなんですか^^」
ボトン「^^」
ダビデ「そりゃ良かった」

彼は笑顔で右手を上げる。



ダビデ「メリークリスマス♪」

ボトンはパン!と彼の手に自分の手を合わせて笑った。

ボトン「メリークリスマス!」

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庭へ出てくると、ダビデは深い溜息をついた。



#とても悔しいはずだけど、ボトンが困っているのが明らかな以上、彼はこうするしかないですよね。彼にとっては、彼女を困らせるよりずっとマシなはず。はぅ

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パク・キソクは車の後部座席から外の景色をぼんやりと眺めていた。
運転する側近がバックミラー越しに話しかける。

側近「会長、韓国へ戻られていかがですか?」
キソク「あぁ。アメリカの病院食は口に合わなかったからね」

側近は穏やかに微笑む。

キソク「ソルロンタンでも買っていこうか」
側近「副会長がお宅でお待ちでしょうに。お迎えに寄りましょうか」
キソク「いや、家内とは夕食を一緒にするから」

「電話を入れておいてくれ」キソクは静かに言い、頷いた。

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キソクが店内の一席で待っていると、側近が入ってきて声を掛けた。

側近「ご子息が到着なさいました、会長」

キソクが顔を上げると、側近の後ろに男性の姿が現れる。
キソクはその人物に微笑みかけた。

キソク「来たか。座りなさい」

男性は無言で近づくと、キソクの向かいの席に座った。

チェ・ダビデだ。

ダビデ「手術は無事終えられたと聞きました。なぜ急にお呼びになったんですか?」
キソク「息子と食事をするのに用事が必要か?」
ダビデ「…。」

料理が運ばれてくる。
キソクはただご飯に水を掛けたものだけを口に運んだ。

ダビデ「まだちゃんと食べられないのに、どうしてここにお呼びになったんです?」

キソクは顔を上げ、微笑んだ。

キソク「また男前になったな」
ダビデ「人目もありますから、話があれば前のように釣りに呼んでください」
キソク「私とお前は釣りしかない間柄なのか?」
ダビデ「…。」
キソク「父さんは年を取って、もう体もガタが来ているし、夜通し釣りをするのもくたびれる。次はサウナに行こう。背中を流してやる」
ダビデ「…。急にどうなさったんです?」



キソク「ずっとそうしたかった。お前と、お前のお兄さんと一緒に釣りに出掛けて、サウナに行って」
ダビデ「…。」
キソク「ずっと…そうしたかったんだ」
ダビデ「兄だと言われると重荷ですね。僕はどうせ会長の保険じゃないですか」
キソク「保険?」
ダビデ「嫡子パク・ミョンス代表の保険、庶子チェ・ダビデ」
キソク「…。」

ずっと穏やかに話していたキソクが黙って俯いた。
父の姿をダビデはじっと見つめる。
キソクが顔を上げた。

キソク「お前は保険じゃない。どこの親が我が子を保険だと思う?」
ダビデ「…。」
キソク「守りたかっただけだ」
ダビデ「!」
キソク「お前も、お前の母親も」
ダビデ「話にならない。母さんを守ったって?!」
キソク「…。」

どうにも収まらず、ダビデは言葉を飲み込んだ。

ダビデ「すみません。先に失礼します」

立ち上がった息子の後ろ姿に、キソクは小さく肩を落とした。

+-+-+-+

約束の夜、ソウルは雪景色に変わっていた。
真っ白な服に身を包んだ雪の妖精が向こうから歩いてくる。

レストランの前で足を止めると、ボトンは大きく息を吐きだした。

+-+-+-+

一人、予約席でマテは腕時計を確かめる。
ボトンはまだ現れなかった。

+-+-+-+

ダビデたちの公演がイルミネーションの下で始まろうとしていた。
マイクを通し、ダビデが観客に語りかけた。

ダビデ「こんばんは。今年の公演はこうして野外で、すごく寒いですね。あはははっ。それではさっそく一曲目をお聴きください」

ダビデは振り返り、バンドのメンバーに合図をする。

+-+-+-+



ボトンはテープの巻かれた指先をじっと見つめていた。

顔を上げると携帯電話を取り出す。



+-+-+-+

正面を空席にしたまま、マテは出された食事を黙々と口に運んだ。

ボトン(メール)「オッパ、ごめんなさい。めっちゃくちゃ後悔すると思います。オッパと一緒にクリスマスを過ごすのが夢だったのに、こんなふうに逃したら死ぬほど後悔しそう」



ボトン(メール)「だけど、チェチーム長との約束は守らなきゃいけないと思うんです。本当にごめんなさい、オッパ」

+-+-+-+

ダビデたちの演奏は進んでいた。

ダビデ(MC)「皆さん、そろそろお腹が空いてるでしょう?」
観客「はーい!」
ダビデ(MC)「いよいよ最後の曲なんですが、この曲は僕が…」

そのとき、後ろから観客の間を分け入って前に進み出たのは…ボトンだ。

ダビデ「!」



彼女に気づいたダビデに、ボトンはニッコリと手を降った。
まるで天使が現れたかのように。

ダビデ(MC)「この曲は僕が作りました。初めて愛の歌を作ってみたんです。何故かと言うと…僕が恋に落ちたからなんです」

観客が囃し立てた。
つられてボトンも手を叩く。

ダビデ(MC)「この曲を…僕を困らせた一人の女性に聴かせたいと思います」
ボトン「?!」

前奏が静かに流れ始める。

다른 것만 보고 있다
別のものばかり見てるんだね

네 곁에 항상 내가 서 있는데
君のそばにはいつだって僕が立っているのに

아주 조금만 고개를 돌려도 나의 맘을 느낄 수 있을 텐데
ほんの少しだけ振り返ってみれば 気持ちを感じるはずなのに

나 볼 수 있을 텐데
僕が見えるはずなのに



더 점점 멀어져만 간다
少しずつ遠ざかっていくんだ

늘 여전히 나 네 곁에 머물러 있는데
いつだって変わらず 僕は君のそばにとどまっているのに

나의 사랑을 또 너에게 닿지 못하고
僕の愛は君に届かず

멀어져만 가나 봐
遠ざかっていくだけで

보내줘야 하나 봐
手放さなきゃいけないようで



널 사랑한단 말이야
君を愛してるんだ

널 처음 본 그 순간부터
初めて会ったあの瞬間から

널 사랑한단 말이야
君を愛してるんだ

이 말이 들리지 않니?
この声が聞こえないかい?

우리 처음부터 단 한 사람만 바라봐서
僕たち 最初からたったひとりを見つめているから

마주칠 수 없나 봐
目が合うことがないんだね

그래도 한걸음 다가가 본다...
だけど一歩 近づいてみよう…




+-+-+-+

暖かいカフェ。
ボトンはダビデの前でなかなか顔を上げられないでいた。

運ばれてきたドリンクを一口飲み、小さく咳払いをする。

ボトン「一度飲んでみたかったんだけど、美味しいな」
ダビデ「トッコ社長とミョミが飲んで、有名になったやつでしょう?」
ボトン「^^;」

あっという間にまた沈黙が戻ってくる。

ボトン「歌、すごくお上手でしたよ、チーム長。歌手になれそう♪」
ダビデ「僕じゃなくて…曲はどうでした?」
ボトン「…。チーム長、私ね」
ダビデ「意味がよくわからない…そんなのダメですよ。僕はボトンさんに初めて会った時から好きだったんです」

#ふぉ~、ストレートでいいね♪

ボトン「!」
ダビデ「あのときから」

~~ダビデは親しい医者を訪ねていた~~

診察室でダビデは放心状態で座っていた。

医師「寝てるのか?」
ダビデ「薬を飲んで少し寝て…。まぁそんな感じだ」
医師「(苦笑)薬ばかり飲んでないで、恋愛なり運動なり、何かやってみろよ」
ダビデ「(溜め息)何をしてもダメなんだ」
医師「まだお母さんの夢をよく見るのか?」
ダビデ「…。」

ダビデは苦しそうに顔を歪めると黒いサングラスをつけた。

ダビデ「帰る」
医師「ここじゃなくて外で会おう。酒でもやりながら」
ダビデ「…あぁ」

外へ出てトボトボと歩いていると、正面に威勢のいい女の子の姿が見える。
小さなメガホンで行き交う人々に声を掛け、何か売っているようだ。

彼はサングラスを外し、彼女に釘付けになった。

それがボトンだった。

~~

ボトンはダビデと初めて会った日のことを思い出す。

ボトン「そうだったんですね…。それで靴下を売るのも手伝ってくれたんだ」
ダビデ「始まりはそうだったけど、理由はそれだけじゃありませんよ」
ボトン「?」
ダビデ「商品がよかったのは事実だから」
ボトン「確かに私が困らせたみたい」
ダビデ「…。」
ボトン「チーム長、すごくイライラしたでしょうね。私、毎日綺麗なオッパのことばかり話して」

ダビデは小さく微笑み、黙って俯いた。
ボトンは大きくため息をつく。

ボトン「だけど、どうしよう。私、これからもチーム長を困らせるかもしれない」
ダビデ「…。それなら、これからもそれでいいですよ」
ボトン「チーム長、私ね」
ダビデ「ただ、いてくれればいいんです」
ボトン「…。」
ダビデ「ボトンさんはね、ボトンさんが好きな人を見つめていてください」
ボトン「…。」
ダビデ「僕はそんなボトンさんを見つめてますから」
ボトン「…。」
ダビデ「そうしているうちに、たまに僕のことを思い出したら、そのときは後ろを振り返ってください。僕はそれでいい」



ボトン「…。そんなのすごく辛いのに」
ダビデ「…。」
ボトン「自分を見てもくれない人の後ろ姿だけ見てるなんて…そんなのすごく辛いのに」
ダビデ「僕は嬉しいけど?」
ボトン「…。」
ダビデ「見つめていられる人がいるって、地面ばかり見て生きるより幸せです、僕は」

微笑むダビデをボトンはじっと見つめ、辛うじて微笑んだ。

+-+-+-+

ボトンがダビデと一緒に家の前まで帰ってくると、待っていたマテが車から降りた。

ボトン「オッパ…」

車のドアを閉めると、マテはまっすぐ二人に近づく。

ボトン「ご飯食べました?」

マテはボトンの前に立ち止まると、表情一つ変えずに口を開いた。

マテ「行くぞ」
ボトン「え?」
マテ「いつまでもテントで過ごすわけにもいかないだろ。(ダビデに視線を移す)寒いのに外で寝かせるのも礼儀に反する」
ダビデ「社長!」
マテ「(ボトンに)荷物は後で取りに来るんだ」

マテが背を向けようとする。

ボトン「オッパ、急にどうしたんですか?」
マテ「お前、うちの家で暮らしたいって散々言ってたろ」
ボトン「!」
マテ「一部屋与えてやるから、そこで暮らせ」
ボトン「今度話しましょう。私が自分で決めますから」
マテ「お前が何を…!」

思わず声を荒らげ、マテは慌てて口をつぐむ。

ボトン「!」
ダビデ「!」

「行かないのか?」マテはボトンの手首を掴み、歩き出す。
次の瞬間、もう一つの腕をダビデが掴んで引き止めた。

ダビデ「ボトンさんはあんたの所有物か?!」
マテ「…。」
ダビデ「何て無礼な真似を!!!」
ボトン「!」

マテはダビデを睨みつけたまま言い放つ。

マテ「ここで夜を明かすつもりか?キム・ボトン!!!」




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ここでエンディングです。

えーっと。
原作に関して話すことは特にありません。
今回翻訳分は完全オリジナルです。

この段階でこんな緊張した三角関係を思い切り表に出してしまって、この先、まだまだ皆で力を合わせて会社を大きくしていかなきゃいけないのに一体どうするんだろうと…。

とにかく、ミョミからちゃんと学んでから次に進んでよね。
「タイミングを知る女」が授賞式で告白したからって、「ああ、このタイミングかぁ~♪」で済ませるつもりじゃないだろうな…。

#あ、ちなみに、原作でミョミから学ぶのはタイミングではありません。そこからして変更してあります。

ではでは!






3 件のコメント:

  1. ありがとうございます(*´∀`)
    全部、、、オリジナルだったんですね
    かなり違和感のある展開だったので
    あれ?って思ってはいましたが、、、(  ̄▽ ̄)
    これからに、、、
    期待します(*´∀`)

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  2. 最後のシーンでボトンの手を取りあいながら、マテの家に一緒に住もうと、言われていたんですね~(#^_^#)羨ましいo(^-^)oワクワク2人の男性が一人の女性の手を取りあうシーンは、韓流ドラマの定番ですね(*^_^*)ダビデも息子だったんだ~(☆。☆)
    今後どうなるのかな~o(^-^)oワクワク
    よろしくお願いします(^.^/)))~~~bye!!

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  3. ユジナさん♪
    翻訳を読ませて頂くと色々繋がってきて楽しいです^^
    私は原作を読んでいないので、どこから原作と変わりつつあるのか気になっていました。
    いつもありがとうございます♪
    ご無理のないように…でも次も楽しみにしています (*^^*)

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