2013年12月8日日曜日

きれいな男6話あらすじ&日本語訳vol.1

チャン・グンソク、IU、イ・ジャンウ、ハン・チェヨン出演「綺麗な男」6話です。

次のミッションは第三の女、人脈の女王から『人脈』を学ぶこと。
「今まで自分の力で金を稼いだことがなかった」と言いながら、実は今回もたいして役に立っていないマテですが(笑)、今後、このビジネスがどう発展していくかも見どころです。



 ではスタート!


+-+-+-+

「見える。ボタンが…」

靴下の完売に喜び合うダビデとボトン。
二人の姿をじっと見ているうちに、マテにはダビデが心に持っているボタンが見えるようになっていた。
「人の体(表面)を観察している内に、偶然心が見えるようになる」と言っていたエレキ仙女のアドバイス通りだ。

「チェ代理、あんたのボタンは…キム・ボトン?」

マテが近づくと、二人が彼に気づいた。

ボトン「オッパ!完売しましたよ!」
マテ「お疲れ。(ダビデに)お疲れ様でした」

ダビデはボトンの手首を握った手を離し、マテに向き直る。

ダビデ「何をおっしゃるんですか。ボトンさんが苦労なさったからですよ」
ボトン「ふふふっ♪」
マテ「(ダビデに)あの…」
ダビデ「?」
マテ「ボトンに話があるので、ちょっと僕が連れて出ます」
ダビデ「あぁ、はい、えぇ」
ボトン「ここで話してください、オッパ^^」
マテ「…。」

マテは黙ったまま、ゆっくりとボトンに顔を近づけた。

ボトン「?!」
マテ「行こうって言ってんだ」

マテはボトンの肩をひしと抱き、ダビデに視線を送ると、彼女を連れて歩き出した。
ザマーミロの笑みを浮かべ…。

ダビデ「……………。」

#マテのボタンはわかりやすいね。

+-+-+-+

さてさて、「写真10枚撮らせてやる」という約束を早速果たしたマテ。
次々にポーズをとるマテの前でシャッターを切るボトンの顔がみるみる輝いた。

ボトン「きゃー♪最高!10枚撮っていいんですか?ホントに?」
マテ「完売記念の褒美だ。きっかり10枚だぞ」
ボトン「うん!」

「カシャ」

何枚目かのシャッター音を聞くと、マテはボトンに手を差し出した。

マテ「貸せ」
ボトン「まだ終わってませんよ」
マテ「貸せって」

彼女の携帯を奪い取ると、マテは写真一覧から3枚選択する。

マテ「これは消せ」
ボトン「どうして?よく撮れてるのに!」
マテ「(左頬を指し)こっち側がいいって何回言えば分かるんだよ。やり直しだ」
ボトン「ふふっ。もう一回~♪」

マテがもう一度ポーズを取った。

マテ「さっき見てたらお前、チェ代理とエラく仲いいみたいだけど…、他のスタッフたちもいるのに変な目で見られるだろ」
ボトン「じゃ、オッパも変な目で見られてるんですね。女の人たちとエラく仲いいでしょ?」
マテ「(ムッ)撮りたくないのか?」

ボトンが携帯の画面から顔を上げた。

ボトン「オッパ、(舌なめずり)舌を舐めるの、撮りましょうよ」
マテ「(呆)お前、反抗的だな」

マテは文句を言いながらも、すぐに唇をねっとり舐めてみせる。

ボトン「うーん、ちょっと安っぽい感じ」
マテ「もういい。やめる」
ボトン「あら♪ それいいわ!ムッとした顔」



睨むマテの顔にシャッターを切り、ボトンは嬉しそうに笑った。

マテ「これでいいだろ。飯食いに行くぞ」

ボトンは食事に誘うウリイェップンオッパに見向きもせず、携帯画面を見つめたまま素っ気なく答えた。

ボトン「私、行くところがあるんだけど」
マテ「誰と?誰とだよ!」
ボトン「えっ?」
マテ「…。いや」

立ち去ろうとするマテを「もう一枚!」とボトンが引き止める。

階段を挟んだ反対側のスペースで、彼らの姿に誰かが足を止めた。
部下を伴ったナ・ホンランだ。
傘下の会社に潜り込んでいるマテに、ナ・ホンランの顔に不安の色が滲んだ。

+-+-+-+

マテはエレキ仙女と公園を歩いていた。

マテ「完売記念のコメントでもするべきかな?(彼女に両手を広げ)全ての栄誉はエレキ仙女様に捧げます、みたいな?^^」
エレキ仙女「…。」
マテ「仙女様がキム・インジュンって方のボタンを押してくださったお陰でしょう?」
エレキ仙女「そうじゃないわ」
マテ「?」
エレキ仙女「答えはね、全て当事者たちが持っているの」
マテ「え?」

エレキ仙女は静かに笑った。

エレキ仙女「可笑しなことね。人は皆、当人には分かっている問題を、私に尋ねに来るわ」
マテ「…。」
エレキ仙女「チェク社長も、私が選んだ不動産を買ってお金を稼いだと思ってるけど、そうじゃない。どこを買いたいのか、すでに本人に考えがあって、それを私が言い当てるだけ」
マテ「…。」
エレキ仙女「マテ、あなたも同じよ。人の心をあなたほど上手く操れる人、他にいるかしら?」
マテ「え?」

マテを振り返ると、エレキ仙女は彼をまっすぐ見つめ、静かに切り出した。

エレキ仙女「マテ、もう…会いに来るのはやめなさい」
マテ「…。」
エレキ仙女「マテ」
マテ「…。」
エレキ仙女「私の心のボタンが見える?」
マテ「…。」
エレキ仙女「私の心のボタンよ。見えるでしょう?」

マテはかすかに頷いた。

マテ「えぇ、見えます」
エレキ仙女「どんなボタンが見える?」
マテ「仙女様は…僕を愛しています」
エレキ仙女「…。」
マテ「…。」



エレキ仙女「やっぱり…そうだったのね。私の目には自分のボタンは見えないわ」
マテ「仙女様には自分のボタンが見えないんですか?」
エレキ仙女「人は自分の心を操ることは出来ないから
マテ「…。」

言葉のないマテに、エレキ仙女は微笑みかけた。
バッグから包みを出すと、彼に差し出す。

エレキ仙女「これ。プレゼントよ」

包みが彼の手に渡った。

マテ「何ですか?」
エレキ仙女「後になってね、マテが進む道でとても辛いことが起きたとき、自分の心を自分でコントロールできずに苦しむことになるわ
マテ「…。」
エレキ仙女「そのとき…そのときはぜひこれを開けてみて」

マテは手に持った包みを見つめた。

エレキ仙女「自分の心を操るための答えになってくれるはずよ
マテ「…。ありがとうございます、仙女様」

そう言うマテの声はどこまでも優しく響く。
エレキ仙女が身を寄せると、マテは静かに彼女を抱きしめた。



彼から離れると、彼女はその場を一人去っていく。
遠ざかるエレキ仙女の後ろ姿を、マテは見送った。

+-+-+-+

マテは母の眠る慰霊堂を訪れていた。

マテ「母さん、うちの隣の息子がさ、初めての給料でおばさんに赤い下着を買ってきた時、すごく羨ましがってたろ?バレバレだったよ、あのとき」

「ほら」マテは母の写真に向かって箱を差し出した。

マテ「母さんがほしがってた赤い下着、買ってきたよ。金らしい金を初めて稼いで、母さんにプレゼントを買ってきたんだ。…。ちょっとだけ出てきて、受け取ってくれないかな?」

彼は母の写真に手を伸ばす。



マテ「会いたいよ、母さん」

ふとマテが気配に気づき、後ろを振り返る。
そこにはボトンが立っていた。

ボトン「…。」
マテ「行くところがあるって、ここだったのか?」
ボトン「私…オッパがここにいるとは思わなくて」
マテ「…。」
ボトン「おばさんに赤い下着を買ってきたんです」

ボトンの手には買い物袋が握られていた。



マテ「下着は俺が買ってきたから、自分で着ろ」
ボトン「オッパ、成長しましたね」
マテ「こいつ!オッパに向かって」
ボトン「ふふっ♪」

笑うボトンに、つられてマテも小さく笑った。

+-+-+-+

外を出た二人は並んで歩き出した。

ボトン「靴下全部売っちゃったから、私、もうオッパの顔は見られないんですよね?」
マテ「…。」
ボトン「(携帯を取り出す)これからは写真を見て何とか…」
マテ「キム・ボトン!」

マテが立ち止まり、彼女に向き直る。

ボトン「?」
マテ「俺たち、行き着く所まで行こう」
ボトン「え?行…行き着く所まで…行こうって?」
マテ「…。」
ボトン「(嬉)私はまぁ、いつだって身も心も準備は出来てるけど、それはちょっと…」
マテ「とことん金を稼ごう」
ボトン「あぁ。お金ですか」
マテ「不可能なことなんかない。お前と俺なら」
ボトン「…。」
マテ「とんでもなく稼げるぞ。MGグループなんてもの、買い取れるくらいな」
ボトン「(頷く)そりゃそうですよ。オッパがオッパの顔くらい頑張れば、めっちゃくちゃ稼げますよ」
マテ「…。」
ボトン「オッパの顔に換算したら、うちの国のトップ企業が本気出したって足りないくらいですから」
マテ「(うんうん)」
ボトン「頑張りましょう♪」
マテ「(ニッコリ)そうなったらまずは会社の名前がいるな」
ボトン「えーっと」

+-+-+-+

マテはその足でユラに会いに来ていた。

マテ「はぁ。キム・インジュンって人、ホントに凄い人らしい」

お茶を淹れながら、ユラがチラリとマテを見る。

マテ「ちっとも上手く行かなかったのに、一発で編成されたんだ。その人の情報、もっと欲しいんだけど」
ユラ「保険業界ではトップ。家庭環境は夫が海外勤務、子どもはいないわ。そんなところかしら」
マテ「ん?随分楽な環境だな」
ユラ「(笑)そうはいかないと思うけど?」
マテ「?」
ユラ「彼女が一番嫌うワード、”ゴシップ”。これからはガードが固くなるかもしれないわ」

そこへマテの電話が鳴る。
画面の名前を見たマテは、前にいるユラと視線を合わせた。

マテ(電話)「もしもし。あぁ、祝賀パーティー?やればいい。みんな頑張ったんだから。何が食べたいんだ?」


「牛・肉 いいですか?」というボトンの可愛らしい声が電話の向こうから聞こえてくる。

彼は答えに困ってもう一度ユラを見た。

+-+-+-+

ダビデ邸の庭に皆が集まっていた。
バーベキューから火が噴いて大騒ぎする一同。
悲鳴が上がった後に今度は笑い声が響く。

トクセン「トッコ社長、こんなめでたい日にサムギョプサルって何だよ」
マテ「(ムカッ)」
ボトン「何言ってんですか。超美味しそうなのに。もうお腹一杯ならいいですけど?」

肉を口に運ぼうとするボトンを、ダビデが慌てて止める。

ダビデ「まだ焼けてませんよ」

ダビデがボトンにアクションを起こすたび、マテの視線がめざとく動いた。

ダビデ「僕が焼いてあげますから」
ボトン「あははっ、まだ焼けてませんでした?よく見えなくて^^;」
ダビデ「僕が見てればいいんですよ~」

マテがシラッと口を開く。

マテ「焼くのが下手なんだろ」

俄に場を包む沈黙。
「それ焼けよ」とマテが指さした皿をボトンが手に取ると、「僕が焼きますよ」とダビデがさっと手を伸ばす。

ボトン「私が焼きますよ」
ダビデ「いや、僕が焼きますから」
ボトン「私が焼きます」

マテの目の前で左右から皿を引っ張り合う手。
黙ってみているマテの心の中で、ひそかにイライラが募った。

マテ「(思わず)チェ代理」
ダビデ「?」
マテ「お掃除靴下、次はどうすればいいですかね」
ダビデ「…。それをどうして僕に?」
マテ「まぁ、チェ代理は専門家だから」

ダビデは手に持っていたトングを置く。

ダビデ「再投資しますね、僕なら」
マテ「…。」
ダビデ「こういった商品はすぐにコピーが出るから、急がないと。少しでも上手く行ってる時に、たくさん売るべきです。こういうものは全て流行に乗るから」

マテが「なるほど」という表情で頷いた。

ボトン「倉庫にあった靴下は全部売れちゃいましたよ」
マテ「また作ればいい」
ボトン「えっ?!山積みの靴下を売り払うのにあれだけ苦労したのに、また作るって?!」
マテ「…。」
ボトン「オッパ、私、白い靴下見たら吐きそうですよ」
トクセン「どうやって靴下作るんだ?工場は?職員は?一体何言ってんだか」
ダビデ「そうですね。生産工場を作るのは無理だから、OEM契約で作るんです」
マテ「!」
ダビデ「すでに動いている靴下工場と提携して、生産・販売する方式」
ボトン「…。」
マテ「それなら、これからすべきことは靴下工場を手配することだな」

マテの視線が茫然としているボトンに移った。

マテ「肉で気力をつけたら、靴下工場探しに入ろう、キム・ボトン」

その瞬間、またバーベキューから火が噴き出した。

「熱っ!」ボトンの指をおさえる。
ダビデが慌てて「大丈夫ですか?」と声を上げた。
ずっと座っていたマテが立ち上がる。

ダビデ「ボトンさん、大丈夫ですか?!」
ボトン「大丈夫、大丈夫ですよ」
ダビデ「(指を見て)あっ!薬塗りましょう、薬!」

マテが呆然と見ている前で、ダビデが薬を取りに駈け出した。

マテ「おい、薬はダメだ。病院に行くぞ」
ボトン「いえいえ、そんなヒドくないですよ」
マテ「…。」
ボトン「チェ代理が薬を取りに行ったから」
マテ「…。(怒)薬で済むと思ってんのかっ」
ボトン「いや…」
マテ「…。」
ボトン「ホント大丈夫です」
トクセン「(茫然)」

マテは突然ボトンの腰に手を伸ばすと、思い切り彼女を担ぎ上げた。

マテ「痕が残る。病院に行くんだ」

「あらま~♪」と叫ぶボトンを担いだまま、マテは門を出て行く。
薬箱を持ってダビデが急いで戻ってくると、そこにはポツンとトクセンが残されていた。

ダビデ「ボトンさん?どこ行ったんです?」
トクセン「さぁ、なんか持ち上げてサッと通りすぎて行ったけど…まぁそんな感じ」
ダビデ「…。」

+-+-+-+

マテとボトンが病院から出てきた。

ボトン「絆創膏貼ればそれで良かったのに」

手の甲にぺたっと貼られたガーゼを、ボトンは指で撫でた

マテ「おい。お前な、それ左手だろ。(苦し紛れ)左手がやるのは何だ?」
ボトン「右手の補助?」
マテ「…。普通女はな、キム・ボトン、左手に結婚指輪をはめるんだ」
ボトン「!」
マテ「左手ってのはそういう手だ!それなのに、その左手に傷が残ったら、心が痛むか痛まないか、どっちだ?」
ボトン「………。」
マテ「?」

たちどころにボトンの頭の中に幸せなシーンが広がった。
正装したオッパが、ウェディングドレスを着た自分に跪き、結婚指輪を差し出す。
ドキドキしている自分の手を取ると、愛するオッパが薬指に指輪を…指輪を…



オッパが笑顔で囁きかけた。

「そんな想像…してる場合か?」

と、ボトンの妄想は音を立てて砕け散った。

ボトン「!」
マテ「何してんだ?」
ボトン「…。何でもないですよ」
マテ「車に戻るぞ。あ、それからお前な」
ボトン「はいっ?」
マテ「キム・インジュン所長と食事の席を設けるんだ」
ボトン「(頷く)はい」

駐車場へ向かったマテの背中に、ボトンは微笑んだ。

ボトン「オッパ、きまりが悪いんだろうな。自分の気持ちがバレバレな気がして♥ふふっ、ふふふふふっ♪はぁ~私、プロポーズされちゃったのかな?きゃはっ」

+-+-+-+

さて、さっそく靴下工場探しが始まった。
ピックアップした工場をボトンとダビデが訪問し、サンプルを渡す。

【Yellow Socks社】

工場長「韓国中どこへ行っても、その単価じゃ作れませんよ」
二人「…。」
工場長「5年前なら出来ただろうけど、今じゃあり得ない話ですね」

【Goldman Socks社】

工場長「この価格じゃ糸代にもなりませんよ。全く利益にならないですね」

【SOCKS PIN社】

工場長「つまりね、マージンが低すぎるんです。いくら大量に売るって言ったって、その程度の利益のために生産ラインを動かすことは出来ませんよ」
二人「…。」

+-+-+-+

ボトンとダビデはコンビニの一角に設けられた飲食スペースでお弁当をつついていた。

ダビデ「工場、見つかりますよ。あまり心配しないで」
ボトン「…。」
ダビデ「今までのことだって、他人から見れば不可能なことだったんです。けど僕たち、やり遂げたでしょ?」

ボトンが微笑み、頷いた。

ボトン「そうですよね」

ダビデの表情に安堵が滲む。

ボトン「考えてみたんだけどね、靴下に愛情を持ってる工場を探さないといけないなぁって」
ダビデ「…。」
ボトン「単価に目をつけても、たいして魅力がないから」
ダビデ「愛情か」
ボトン「(うんうん)」
ダビデ「そうだ、靴下同好会に参加してみます?」
ボトン「靴下同好会?」
ダビデ「見てるとね、あの人たちの靴下に対する愛情は桁外れですよ。見学してみましょう」
ボトン「う~ん♪面白そう」
ダビデ「あははははっ」

そこへボトンの電話が鳴り、彼女が明るく電話を取る。

ボトン(電話)「はい、オッパ♥」
ダビデ「…。」

ボトンの表情が曇った。

ボトン「…いえ。はい、はい、今やります」

ボトンは電話を切ると、そのまま携帯のアドレス帳を開いた。

ダビデ「どうしたんです?」
ボトン「オッパに言われてたこと、忘れてたんです」

彼女はキム・インジュンの連絡先をタップする。
「ちょっと失礼しますね」ボトンが耳に電話を当てると、ダビデは自分のお弁当のおかずをそっと彼女の器に移し、満足気に微笑んだ。

ボトン(電話)「所長!あのときの遠い親戚です!」

+-+-+-+

「どうすればいいのかしら」キム・インジュンは困惑していた。

インジュン「いいですってば。あれは私の善意なんです。お礼目当てで力になったわけじゃないの。だから気を遣わないで」
ボトン「もぅ、所長…。私、ホントダメなんです。食事のセッティングできなかったら私、クビですよぉ。一回だけ助けてください。ね?」
インジュン「…困ったわね」
ボトン「うちの社長に会って、一度だけ挨拶を受けてください。クールな人でね、絶対所長を煩わせたりなんかしませんから」
インジュン「(諦める)クビになっちゃダメよね」
ボトン「(喜)」

インジュンは予定を確かめた。

インジュン「私、あさっての晩なら大丈夫だけど」
ボトン「はぁ~、良かった^^」
インジュン「^^」

+-+-+-+

ナ・ホンランは調査させた資料をめくっていた。

ホンラン「お掃除靴下…?どういう経緯で提携会社として通販で売ることになったの?」
部下「生活用品担当のMDがお掃除靴下というアイテムを持って来まして。斬新なので30分の枠に編成されたんです」

ホンランは音を立てて資料を閉じた。

ホンラン「今後その業者に関わることは私に直接報告なさって」

+-+-+-+

奥の部屋のスクリーンを下ろし、ユラはリモコンのスイッチを押した。

ニュース映像が流れ始める。



【1976年 MGグループ脱税事件】

記者「MGグループの次男、ナ・ジノ代表の脱税および賄賂嫌疑が確定したのを受け、収監されました」

映像の中でナ・ジノ氏が連行される様子が映し出される。

記者「すでに1年前辞意を表明していたMGグループの長男ナ・ジンソク氏も後継者の座から下りていることで、MGグループ後継者の座は空席になりました。この空席はMGグループの残された子女、ナ・ホンラン氏が継ぐことになるだろうと見られています」

ユラが動画を切り替える。

【1980年 ナ・ホンラン パク・キソク 結婚ニュース】

映像の中で若いパク・キソク氏が、党設立の声明を読み上げている。

キソク「庶民のための政治を作るため、先頭に立つ所存です。ここまで韓天党のスポークスマン、パク・キソクがお伝えしました」

その映像を受けて、テレビスタジオで論説員たちが話し始める。

1「パク・キソク氏は将来トップにも立つ政界のホープですから。MGのナ・ホンラン氏がパク・キソク氏との結婚を発表したことには注目すべきです」
2「そうですね。事実、MGの後継者としてナ・ホンラン氏が地位を確立するには、未婚のままでは難しいと、ナ・ホンラン氏本人も計算済みだったでしょう。パク・キソク氏と結婚し、財界と政界を融合させようと。悪くない展望でしょう」
3「ただひとつ、パク・キソク氏には息子が一人いますが、ナ・ホンラン氏の立場としてはやはり、受け入れることはないでしょうね」
1「愛情が湧くこともあるでしょう。愛は海をも超えるって言うんだから」

ユラが再び動画を進めた。

【1985年 長男死亡のニュース】

キャスター「MGの長男、ナ・ジンソク氏が交通事故で逝去しました。検死の結果、大量の麻薬成分が検出されたとのことですが、葬儀場にいる記者につないでみましょう」



ユラが停止ボタンを押すと、スクリーンが白く戻った。

ユラ「表面的にはとても自然な直系継承だけど、内部は間違いなく骨肉の争いがあったはず。どうやって実兄たちを粛清して、その座に上ることになったのかしら?ナ・ホンラン副会長」

※「三行でまとめてくれ」っていう要望に答えます(笑):ナ・ホンランはMGグループの直系。二人の兄が脱税や事故で後継者の地位を外れ、残った妹のナ・ホンランは政界のホープであったパク・キソクと結婚し、財界・政界を牛耳る大きな権力を手にした、ってこと。

+-+-+-+

ボトンとダビデが次に始めたのは、空き部屋のリフォームだ。
家具を移動させ、動物の絵が描かれた壁紙を貼る。
「鬼才:男女ボトン」のセンスで、一体どんな部屋が出来上がるのやら…。

ダビデ「ボトンさんと遊んでくれる動物たち(壁紙)、可愛いでしょ」
ボトン「(笑)ホントにそのままで良かったのに、こんな苦労まで」
ダビデ「何言ってるんですか。これから仕事を始めるっていうのに、こんな殺風景な男の部屋じゃダメでしょ。可愛くしてあげますから」
ボトン「ふふっ、ありがとうございます。この壁紙、私が糊付けしますから、チェ代理」
ダビデ「…。ダビデ」
ボトン「えっ?」
ダビデ「僕の名前、ダビデですよ」
ボトン「…。」
ダビデ「代理じゃなくて、ダビデって呼んでくれたらなぁ」
ボトン「あぁ、ダビデ…さん?」
ダビデ「…。」
ボトン「ダビデ様?はははっ、変だな」
ダビデ「ダビデ…(照れ笑い)ダビデオッパ?」
ボトン「(眉をひそめる)うーん、ちょっと変」
ダビデ「…。」
ボトン「はははっ、私はこのまま”チェ代理”がいいけどな」
ダビデ「じゃ、”代理オッパ”、どうです?」
ボトン「はははっ」
ダビデ「あははははっ」
ボトン「代理オッパ^^」

楽しそうに笑っていたボトンは、ふと誰かがいる気配に顔を上げた。

ボトン「おっ?オッパ、いつ来たんです?」

そこには厳しい表情で立っているマテの姿。

マテ「楽しすぎて音も聞こえなかったんだな」

「何だよ、動物園か?」マテは壁の動物に呆れて声を上げた。

マテ「入場料払って入らなきゃな」
ダビデ「純粋心のない人だ」
ボトン「どうしたんです?何か指示でも?」
マテ「…約束、とりつけたか?」
ボトン「メールしたでしょ?」
マテ「…。」
ボトン「それを聞きに来たんですか?」
マテ「メールなんかしてないだろ」
ボトン「送っ…」
マテ「(黙れと目配せ)」
ボトン「…ってないです」
マテ「…。」
ボトン「すみません」

マテは白々しく部屋を見渡した。

マテ「はぁ、ダサいな。全く」

マテが出て行くのを見送るダビデは、表情を曇らせた。
ドアが閉まった途端、ボトンが明るく口を開く。

ボトン「可愛いですよ!」
ダビデ「(復活)ですよね!全くあの人は…」
ボトン「ふふっ^^」
ダビデ「あ、そうだ。今晩、例の靴下同好会の集まりがあるんだけど、行きますか?」
ボトン「コール!」

+-+-+-+

レストランの席へ案内されたキム・インジュンは、先に来て座っている男に目を奪われた。
折りたたんだ英字新聞を片手に持ち、涼し気な目で文字を追っている(ように装っている)若い美男。

男は新聞から視線を上げると、彼女の姿に気づき、立ち上がる。
彼が丁寧に頭を下げると、インジュンが微笑んだ。

インジュン「はじめまして」

彼女がバッグを開けると、マテはその手元に視線を落とす。
オレンジ色の使い込まれた名刺入れから、キム・インジュンが名刺を取り出した。

インジュン「キム・インジュンです。お会いできて光栄です」
マテ「(受け取る)あぁ、名刺を切らしていて。今度お渡しします」
インジュン「えぇ」

席につくと、マテは努めてにこやかに切り出した。

マテ「どうお礼を申し上げてよいやら、随分悩みました。力になっていただき、ありがとうございます」
インジュン「礼には及びません。エレキ仙女様と随分お親しいんですね」
マテ「!」
インジュン「夢の話まで作って自ら電話していらっしゃるなんて」
マテ「…。」

マテは返答に窮し、小さく咳払いをした。

インジュン「エレキ仙女様がそこまで協力するなら、きっと大切な方なんでしょう」
マテ「…。」
インジュン「それなら私にとっても大切な方です。当然お手伝いいなきゃ」



その口調に非難の色は全く感じられない。
さほど何でもないように話してニッコリと微笑むと、彼女は水を口にした。
マテは苦笑いを浮かべるのが精一杯だ。

食事が進む。(←気まずい過程全カットでホッとした:笑

メインの料理に二人が手を付けていると、シェフが出てきてインジュンの前に立った。

インジュン「あら、シェフ!」
シェフ「バタバタしていて挨拶できなかったね。よく来てくださっているのに」
インジュン「この料理が挨拶ですよ」

「ところで」とインジュンが話を続ける。

インジュン「シェフ、何かよくないことがあったみたい。顔色が悪いわ」
シェフ「(頬をおさえる)最近、母親のことでいろいろ気になっていて。それでかな」
インジュン「何?お母さまがどうしたの?」
シェフ「ちょっと具合が悪くてね。検査したら早く手術しなきゃいけないってことなんだけど、担当医のスケジュールが一杯で」
インジュン「…。」
シェフ「半年は待たなきゃならないんだけど、年も年だし、持ち堪えられるか心配なんだ」
インジュン「担当医は誰なの?」
シェフ「韓国病院のキム・ミョンシク先生。他の病院を調べてみても、良さそうな医者は皆2,3ヶ月待ちらしい」
インジュン「そうなの…。困ったわね」
シェフ「(溜め息)僕ももどかしいよ」

「お客様がいらっしゃったのに個人的な話を…」とシェフはハッとしたようにマテに微笑みかけた。

シェフ「他になにか作ろうか?ただでさえミセス会の集まりにうちを紹介してくれた礼もできずにいたしね」
インジュン「いいえ、十分ですよ」
シェフ「あぁ、所長、2ヶ月ほど顔を見なかったけど?」
インジュン「はぁ、私、ミセス会のお姉様たちが怖くって。胃もたれしちゃうのよ」

シェフは笑って頭を下げると、テーブルを後にした。

インジュン「ごめんなさい」
マテ「いいんです」
インジュン「私、ちょっと電話しなきゃ」
マテ「ごゆっくりどうぞ。僕は構いません」
インジュン「失礼しますね」

インジュンは席についたまま電話を手に取る。

インジュン(電話)「あなた?全然連絡ないんだから!最近ゴルフにも行けてないんでしょう?忙しいの?あぁ、そうなのね。ちょっと訊きたいことがあるんだけど、あなたのお義兄さん、韓国病院の理事長だって言ってなかった?やっぱりそうよね?!前に聞いた気がしたのよ。あなた、一つお願いがあるの」

人脈を使い、知り合いの悩みを立ちどころに解決する目の前のインジュンを、マテは驚いた様子で見守った。

+-+-+-+

”靴下パーティー”は実に楽しそうだ。
会場はカラフルな靴下で飾られ、参加者たちも靴下をアレンジした思い思いの扮装で集まっている。
その様子に、見学に来たボトンとダビデは顔を輝かせた。

ダビデ「あぁ、それにしてもボトンさんの靴下、最高ですよ」
ボトン「このくらいしなきゃ礼儀に反しますよ」

5本指の肌色の靴下には、ニコニコスマイルとクマのイラスト。
ボトンは1本ずつに笑顔の描かれた指を動かしてみせた。



ボトン「超可愛いでしょ^^」
ダビデ「ボトンさんみたいに超可愛いですよ」
ボトン「えっ?」
ダビデ「可愛…(ハッ)!」
ボトン「…。」
ダビデ「靴下が可愛いって。気合入ってますね^^;」
ボトン「もぅ~♪」

二人は会場内に展示されている靴下に気がついた。

クローバー柄の靴下には『アンデルセンが履いていた靴下』の表題。

ボトン「アンデルセンが履いてた靴下なの?まさかぁ~」

見入っているボトンの腕を、誰かがつついた。

ボトン「?」

その男は懐から何やら紙を取り出すと、二人にちらつかせる。
アンデルセンらしき人物の写真だ。
写真の中のアンデルセンの足元には、クローバー柄の靴下が見える。

二人が目を丸くして写真を見ると、男は写真を懐に戻し、逃げるようにその場を去った。

ボトン「…。へぇ、ホントみたい」

「さて、同志たち!」

渋い男性の声が響くと、皆の視線がそこへ集まった。
声の主は椅子の上にあがり、グラスを掲げた。

男性「”四足歩行”の躍進を願って皆で乾杯しよう!乾杯!」

一同から一斉に「乾杯!」の声が上がる。

男性「我々がこの場に集った理由はご存知ですね?さぁ、準備して」

その声に皆が揃ってその場にしゃがみ込み、四つん這いになった。

ボトン「?」

男性&一同「四!足!歩!行!」

全員で声を掛けながら、靴下をはめた両手を上げたり下げたり。
楽しいアクションに、ボトンとダビデも笑顔になる。
と、思わずボトンが輪の中に飛び込んだ。

男性&一同&ボトン「四!足!歩!行!四!足!歩!行!」
ダビデ「あはっ、可愛いな^^;;;;」

恒例の”儀式”が済むと、参加者は歓談を始める。
「一緒にやればよかったのに!」と興奮冷めやらぬ様子でダビデに話すボトンの元に、リーダーらしき男性が感嘆の声を上げた。

男性「おおっ!(ボトンの靴下に)とどまることを知らない靴下の進化!!!素晴らしいファッションですな」
ボトン「あははっ^^;お母さんの靴下をリメイクしただけなんです。靴下をすごく愛していらっしゃるんですね」
男性「私の天命ですよ。何ていうか、生涯共にすべき運命かな?」
ボトン「へぇ~」

「あぁ」と男性は自分が履いたスーパーマン柄の靴下をひょいとめくると、その中から名刺を取り出した。

男性「靴下工場を経営しております」
ボトン「!!!」

ボトンは目を丸くして名刺を受け取った。

『(株)四足歩行 キム・サジョク』 ※サジョク=四足

「さぁ」とキム・サジョクはボトンにジュースのグラスを手渡した。

サジョク「貴女の靴下の輝かしい復活に、乾杯!」

「乾杯」とグラスを合わせると、ボトンはダビデを見上げて目を輝かせた。

+-+-+-+

ここで一旦区切りますね。
出てくる人、出てくる人、ホントに楽しくてワクワクしますよね^^






5 件のコメント:

  1. ありがとうございます(*≧∀≦*)

    ぱっぱっと早いテンポで進むストーリー♪
    次々出てくる
    奇抜なキャラ、、、(;A´▽`A
    分かりやすい マテのボタンw
    ほんとに楽しいドラマですね♪( 〃▽〃)

    画像のなかの心の声がツボです!

    確かに、手がぷるぷるしそうなポーズですね(笑)

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  2. 今回も楽しかったです。益々先が楽しみになります

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  3. ふぁんきち2013年12月8日 20:05

    やっぱりいいなぁここは。

    字幕付きでないと友達は言いますが、私は映像を見たあと、ここに来て情景を思い出すこの雰囲気が大好き。

    想像してたセリフの意味が少しでもあっていたら、よっしゃ(=^^=)です。

    次楽しみです♡♡♡

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  4. ユジナさん
    細かいところまでありがとうございます
    スクリーンの中の映像の部分とか...
    3行でまとめていただけて(笑)
    これから楽しみにしてます╰(*´︶`*)╯

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  5. yujinaさん、読ませていただいてます!お礼が遅くなりましたm(_ _)m

    特に冒頭のエレキ仙女とのシーンはマテツアーで実際に見たシーンなんで、感動です〜。
    エレキ〜って台詞まで聞こえる距離で見てたのに、私のハングル力では全くわからず。
    前半を見ていたので、あんなシリアスなシーンだったとは。

    これからも楽しみにしてます!

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